森のきのこむし図鑑

森のきのこむし図鑑(38):メダカオオキバハネカクシ

メダカオオキバハネカクシ Megalopinus japonicus (Nakane, 1957)
メダカオオキバハネカクシ Megalopinus japonicus (Nakane, 1957)



Megalopsidiinae(メダカオオキバハネカクシ亜科)は世界から1属164種が知られ、全世界に分布している。熱帯地域に多い仲間で、北米から中南米にかけてかなりの種類が分布している。

日本からは以下の4種が知られている。


M. japonicus (Nakane, 1957) 本土
M. tomishimai Naomi, 1996 本土
M. flavomaculatus Naomi, 1986 対馬
M. hirashimai Naomi, 1986 奄美大島

どうもヒラタケの類から採集されるらしい。ラオスで平地のFITに掛かったことはあるが本種は未だに採ったことがない。わりと珍しいようだ。

顔怖い。

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森のきのこむし図鑑(37):ミイロムネビロオオキノコ

今日も前回に引き続き、オオキノコムシ。

対馬で採集したミイロムネビロオオキノコMicrosternustricolorlewis

ミイロムネビロオオキノコ Microsternus tricolor Lewis

対馬で倒木に来ているものを採集した。

Img_2313

写真は対馬で採集したときのもの。採集したときのほうが色鮮やかだった。

Img_1989

このような倒木を昼間のうちに見つけて、夜になってから再び見回ると、昼間は何もいなくても、暗くなってからはたくさんのきのこむしで賑わう。

真っ暗な森の中をヘッドライトの明かりだけを頼りに歩き、ようやくたどり着いた倒木。わくわくしながら光を当ててみると、そこには昼間には見られなかったたくさんのオオキノコやデオキノコ、ハネカクシが・・・と考えると、夜の森が苦手な僕もついつい行かざるを得なくなってしまう。

本種の撮影のために林床に腹ばいになったため、数日後、マダニに食い入られているのを発見した。

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森のきのこむし図鑑(29-36):チビオオキノコとニセチビオオキノコの仲間(8種)

今日は森の小さな宝石Tritoma属(チビオオキノコ属)とPseudotritoma属(ニセチビオオキノコ属)。

個体数の「多い」・「少ない」は原色甲虫図鑑より。

いずれの種もキノコから採集されるが、珍品が多い。オオキノコはみんな大好きな甲虫。もちろん僕も大好き。


Pseudotritomaconsobrina2
Pseudotritomaconsobrina

 

アカモンチビオオキノコ Pseudotritoma consobrina (Lewis)
赤紋が完全に消失して真っ黒になる個体(写真下)もある。


Pseudotritomayasumatsui
Pseudotritomayasumatsui2
キボシチビオオキノコ Pseudotritoma yasumatsui (Nakane)
少ない。

Pseudotritomaamamiensis
ヨツモンチビオオキノコ Pseudotritoma amamiensis (Chujo)
まれ。奄美大島の特産種。珍品らしいが松尾くんたちが奄美で大量に採集している。ある種のScaphidema(ゴミダマ)っぽく見える。

Tritomadiscalis
ヒシモンチビオオキノコ Tritoma discalis (Lewis)
少ない。

Tritomamaculifrons
ミツボシチビオオキノコ Tritoma maculifrons (Lewis)
多くない。本当に「三つ紋」の個体もあるがこの個体は色彩変異で基部側の二つの黒紋が消失している。

Tritomaasahinai
トモンチビオオキノコ Tritoma asahinai Nakane
まれ。

Tritomakubotai
アブクマチビオオキノコ Tritoma kubotai Narukawa
たぶんまれ。関東以北の本州に分布。アシグロタケなどから採集される。

Tritomaniponensis
クロチビオオキノコ Tritoma niponensis (Lewis)
極めて普通。クロチビとは言うものの、正確には少し青みがかった色をしている。

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森のきのこむし図鑑(28):ヤマトマルクビハネカクシ

Tachinus_japonicus
ヤマトマルクビハネカクシ Tachinus japonicus Sharp


キノコでもっとも普通に見られるマルクビハネカクシの仲間。

キノコだけではなく、植物性の有機物を幅広く食べるらしく、動物の糞などにも集まる。

集団で結構な勢いでキノコを齧ってしまうため、野外で栽培している椎茸にも軽微な被害があるそうだ(椎茸を直接食害するというよりは傷をつけてしまうためそこから腐ったり、ナメクジにやられたりする)。

素晴らしい。

Tachinus_japonicus2

見かけ上、腹部の先っちょが2本足なのが雄で、4本足なのが雌。

"2本足"というのは雄の腹部第9背板のことで、"4本足"というのは雌の第8背板のことなので、比較としてはナンセンスなのだが、とりあえず雌雄はわかる。


Tachinus_japonicus3_2
雄の腹部末端節


本種は僕が解剖した虫の第一号。

学部の四回生の頃、このヤマトマルクビハネカクシの標本を散々解剖の練習に使った。

本種は練習用のハネカクシとしての条件を全て満たしているように思えたからだ。

【解剖の練習をする虫の条件】
・体長が大きく、解剖が容易
・雌雄ともに腹部末端節および交尾器に著しい特徴が出る
・すでにレヴィジョン等でこれから見ようとするパーツが図示されている
・普通種で標本数が多い



しかし問題はあまりに解剖が容易すぎてさっぱり練習にならないこと。

Tachinus japonicusを解剖する   → 解剖簡単すぎワロタ

Sepedophilus armatusを解剖する → 毛抜けすぎワロタ




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森のきのこむし図鑑(27):コブスジツノゴミムシダマシ

トリケラトプスっぽいゴミムシダマシ。

Bolitonaeusbellicosus1
コブスジツノゴミムシダマシ Boletoxenus bellicosus (Lewis)
♂:角が長いタイプ

Bolitonaeusbellicosus2
♂:角が短いタイプ
Bolitonaeusbellicosus3
♀:角なし

Bolitonaeusbellicosus4_2

角の様子は横から見比べると分かりやすいかもしれない。



倒木・立ち枯れに発生したツリガネタケなどに普通。新しい真っ白なキノコにも、古い朽ちかけたキノコにも集まり、硬いキノコをガジガジと齧っているようだ。ライトに飛んでくることもある。

ツリガネタケやサルノコシカケなどの硬い多孔菌類の根元(樹皮とキノコの境目)や裏側にいる場合が多いので、見つけにくい上に写真も撮りにくい。ただ死んでるのかと思うほど動作は緩慢で、ストロボにもまったく無反応。

同じ多孔菌に集まる仲間でも、これがSepedophilusだったらストロボの光にパニックをおこしてさっさと飛び立ってしまうのと対照的。すべてを達観したきのこむし界の仙人。

サルノコシカケを見つけたらきちんと裏側を覗くといろいろな虫が見つかる。

Img_0403


 

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森のきのこむし図鑑(23-26):ヨツボシオオキノコ・ベニモンチビオオキノコ・ハスジオオキノコ・カタモンオオキノコ

撮るだけ撮って忘れていたやや小型のオオキノコムシ4種類。

Eutriplax_tuberculifrons_lewis
ヨツボシオオキノコ Eutriplax tuberculifrons (Lewis)

Tritoma_sobrina_lewis
ベニモンチビオオキノコ
 Tritoma sobrina(Lewis)

Aulacochilus_decoratus
ハスジオオキノコ Aulacochilus decoratus Reitter

Aulacochilus_japonicus_crotch_2
カタモンオオキノコ Aulacochilus japonicus Crotch

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森のきのこむし図鑑(22):ルリコガシラハネカクシ

Philonthus_cyanipennis
ルリコガシラハネカクシ Philonthus cyanipennis (Fabricius, 1792)

ツキヨタケなどのキノコによくいる普通種のハネカクシ。上翅の色は真っ青から濃紺の個体もいれば、紫色のものまでいてとっても綺麗。



東南アジアにもそっくりなのがいる(同種?)。

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森のきのこむし図鑑(21):オオキノコムシ

本家オオキノコムシ。


Encaustespraenobilis2
オオキノコムシ 
Encaustes praenobilis Lewis,1883


Encaustespraenobilis

前脚の脛節内縁に突起があるのが♂。ないのが♀。


Encaustespraenobilis3

Encaustespraenobilis4

日本産きのこむし最大の種である。

よく保存された原生林の倒木や立ち枯れに生えているサルノコシカケ科のキノコから採集される大型のオオキノコムシ。全国的にも数は少ないが、四国では特に個体数が少なく、珍品である。

僕は徳島の高越山で倒木に生えたツリガネタケからはみ出るようにしてしがみついていた個体をたった一頭採集したのが唯一である。

灯火にも飛来するためライトトラップで採集されることもある。

私の知人(仮にK氏としておこう)にあまりにもこの虫が欲しいために採集した後輩
(仮にT氏としておこう)に土下座をして譲ってもらった挙句、もらった途端に手のひらを返して自分legに捏造したという凄まじいエピソードを持っている方がいる。それくらい素晴らしい虫である(K氏の反応はあまりにも極端であるという点は否めないが)。




まさにこういう状態。

昆虫採集とはかくも厳しきものなり。

20100429_1797079_2



参考:地獄のミサワの「女に惚れさす名言集」

ちなみに僕の記憶ではK氏はこれ以前に既に福岡の英彦山で本種を採集しており、福岡から戻ってくるなり当時三回生で初対面 だった僕にいきなり自慢してきた気がする。(え、この人誰?)と思いながら「はぁ・・・」と気のない返事をする僕を尻目に意気揚々とその場で標本を作り始 め、挙句にその標本を忘れて帰ったというエピソードも付記しておかねばなるまい。ちなみにK氏記念すべき初採集の標本は、今も僕の手元にあるので早く持って帰ってください菅さん。

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森のきのこむし図鑑(20):クロルリゴミムシダマシ

青いゴミムシダマシ。

Metaclisaatrocyanea

クロルリゴミムシダマシ 
Metaclisa atrocyanea(Lewis)

きのこむしって言うか、くちきむしだけど。

山地の倒木などから。

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森のきのこむし図鑑(16-19) ヒメオビオオキノコ ミヤマオビオオキノコ タイショウオオキノコ キオビオオキノコ

中型のオオキノコムシEpiscapha属、および近縁のMegalodacne属。

Episcapha_all  

ヒメオビオオキノコ Episcapha fortunei CROTCH

ミヤマオビオオキノコ Episcapha gorhami LEWIS

タイショウオオキノコ Episcapha morawitzi (REITTER)

キオビオオキノコ Episcapha flavofasciata lucidofasciata CHUJO

日本産Episcapha属の四種類。この類のオオキノコを同定する際に一番参考にしてはいけないのは"斑紋の色"と"斑紋の形"。これらは目立つ形質ではあるが、同じ産地の標本でも個体差が激しく、採集時と標本にしたときでは色が大きく異なることが多いためである。

なお本属の同定に関しては研究室のオオキノコムシ屋の松尾君および"松尾オオキノコ秘伝の書"(原文まま)を参考にした。撮影用の標本も合わせて提供してもらった。

Episcaphafortunii2

ヒメオビオオキノコ Episcapha fortunei Crotch

古い図鑑や文献では学名そのままにフォルチュンオオキノコとなっている場合もある。日本産の同属他種に比べると一番の普通種。後述のミヤマオビオオキノコやタイショウオオキノコに似るが明らかに体長は小さく、複眼の大きさに対して眼間距離が短い。複眼の大きさ:眼間距離=1:1.5-2程度。少し"より目"なわけである。

Episcaphafortunii_2

いろいろな色のヒメオビオオキノコ。採集時にはこの三パターンよりも上の画像のような感じの個体が多い気がする。



 Episcaphagorhami

ミヤマオビオオキノコ Episcapha gorhami LEWIS

古い図鑑や文献には「ゴーラムオオキノコ」の名前で載っていることも。僕が保育園の頃から愛読していた小学館の昆虫図鑑ではゴーラムオオキノコの名前で載っていた。

P8300041

※小学館の昆虫図鑑より引用。
 

前述のヒメオビオオキノコに比べると少し珍しい。

体長はヒメオビオオキノコよりも明らかに大きく、眼間距離も複眼の大きさに比べて少し広い。複眼の大きさ:眼間距離=1:2-2.5。

Episcaphagorhami2

標本にするとこちらの写真の個体のように色がくすむ場合が多いが、タイショウオオキノコよりは赤い斑紋がはっきりしている。

 

Episcaphamoravitzi_2

タイショウオオキノコ Episcapha morawitzi (REITTER)

前述の三種類に比べると珍品のオオキノコ。生きているときはもっと鮮やかな色をしているが、標本にするとほとんどの場合赤色がくすみ、個体によっては地色の黒と同化してほとんど紅帯が消失したようになる標本も見かける。写真の個体はそれなりに色が残っている方。ミヤマオビオオキノコと同じくらいの体長だが、眼間距離は明らかに長く、複眼の大きさ:眼間距離=1:3.5程度になる。

Episcaphamoravitzi2

斑紋がこのように大きく広がる個体もある。

保育社の甲虫図鑑には「対馬では普通であるが、他ではまれ」とという但し書きがしてあるが、実際対馬に行ってみると、笑ってしまうくらい採れる。倒木という倒木にベタベタと張り付いており、あっと言う間に20頭も30頭も採集できるだろう。

タイショウオオキノコはミヤマオビオオキノコなどに比べておそらく山地よりも少し低標高地に多い傾向があり、そのため数が少なく珍品とされているのではと考えられる。最近松山近辺で得られている場所は東野・奥道後・レインボーハイランド周辺といずれも標高がそれほど高くない場所である。このような低地でよい環境が残っている(よい倒木がある)場所というのは非常に限られる。

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キオビオオキノコ Episcapha flavofasciata lucidofasciata CHUJO

「対馬には黄緑色のオオキノコがいるらしい」

そんな噂を聞いたことはないだろうか。正体はこれである。生きているときはもっとなんとも言えない不気味な色をしている。何というか、およそ生物界には存在しないような感じの色。中学生の時などに教科書を無駄にカラフルにするだけで特に意味はないけれどなんとなく勉強した気にさせてくれるあの蛍光マーカーの黄緑色をしている。

日本では対馬にのみ分布するが、基亜種(Episcapha flavofasciata flavofasciata)は朝鮮半島および大陸に広く分布しているようだ。ただしこのような不思議な発色をするのは日本に分布する対馬亜種のみであり、研究室の韓さんが北朝鮮で採集してきた基亜種の方はこのような色をしておらず、普通の赤色をしていた。

Episcaphaflavofasciatalucidofasci_3 

しかし対馬産のものも標本にするとたいていこのような普通の赤色になってしまうため、この「黄緑色のオオキノコ」に出会うためには自分で対馬に行って採集してこなくてはならない。以前対馬に行った際、御岳の尾根沿いで立ち枯れの幹に止まっているのを一柳先生が採集していた。実際に見ると感動する。

本種は同属他種と比較すると、肩の黒色紋が完全に遊離するという点で、標本にして色が変わってしまっていても容易に同定できるだろう。

Episcapha_mark

 
 

ほかに日本産Episcapha属には以下のような種があるが、これらはまだ謎が多い。

Episcapha属とMegalodachne属の両属を明確に区別するのは難しく、所属が行ったり来たりしているものもある。

Episcapha asahinai yakusimensis タイワンエグリオオキノコ (屋久島)

Episcapha asahinai amamiana タイワンエグリオオキノコ (奄美大島)

Epiccapha lewesi lewesi ヒメエグリオオキノコ

Epiccapha lewesi hayashii ハヤシヒメエグリオオキノコ(北海道)

Megalodacne immaculata クロエグリオオキノコ

特にE. lewesiに関しては謎の分布をしているので正体がよくわからない。



クロエグリオオキノコに関してはもっと謎でこれまで徳島県の眉山で採集されたHolotype(♀)のみが知られている。その後も本種を目的とした調査が積極的に行われているにもかかわらず、採集されていない。

・・・というか、コレ、カタボシエグリの黒っぽい個体と黒っぽい個体をひたすらかけ合わせて累代飼育していけば作出できそうな・・・



Episcapha属の同定であるが、前述した眼間距離に関しては正直なところ、あまり参考にならない気がしてならない。というのもかなり個体差があるからである。

Episcapha_eye

違うといえば違うし、一緒と言えば一緒な気もする。

それよりも参考になるなるのは体表面に生えている微毛である(松尾君 談)。

以下、"松尾オオキノコ秘伝の書"(原文まま)を参考に毛の量の比較。キオビオオキノコに関しては前述の遊離紋で識別可能なので除外した。

また松尾君によるとタイショウオオキノコは明らかにconvex具合(背面の盛り上がり)が強いとのこと。

Episcapha_pube_2

 

 

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